PROJECT

PROJECT STORY

project story

“今までにない”に挑み続ける

03

産学官連携により、


超電導という未知の領域へ踏み出す

中部電力株式会社や新潟大学で進められていた超電導技術の研究。
その技術を産業用分野に応用するという先例のないプロジェクトが発足し、テラルの新たな可能性を切り拓く挑戦が始まった。

MEMBER

伊東 徹也

伊東 徹也

技術本部 研究開発部 開発2課

緒方 康博

緒方 康博

技術本部 研究開発部 開発2課
E1 電機グループ

正 孝幸

正 孝幸

技術本部 研究開発部 開発2課
E1 電機グループ

好奇心に突き動かされ、
テラル初の分野へ。

「もともとメンバーの3人はモーター開発に長年携わっていた」とプロジェクトリーダーの伊東は産学官連携プロジェクト発足当時を振り返る。送風機やポンプ製造にあたりモーター(電動機)は必要不可欠。そのモーターの販売先として中部電力株式会社に営業訪問したことが、“超電導技術”というテラルでは触れることのない分野に踏み込むきっかけとなった。
当時、中部電力株式会社では超電導技術の応用先として、大きな省エネルギー効果が期待できる金属加熱分野への適応について研究が進んでいた。加熱の原理は、超電導コイルで生成した強磁場内で導電性の被加熱物(アルミ等)を回転させると、被加熱物に誘導電流が流れ、被加熱物の抵抗により発熱するというもの。その被加熱物を回転させるためのモーターを製造してくれるメーカーを探すも、主要電動機メーカーより特殊対応品への製造に難色を示され、モーターの調達に苦労していた。弊社技監の河島が中部電力の担当者と旧知の仲であったことから、モーターの製造をはじめ、超電導技術を用いた加熱装置全体の開発をテラルに任せることはできないかという話が持ち上がった。
「テラルが商品化することができれば産業用分野においては初の事例。これは面白いチャレンジになる」と今回のプロジェクト参加が決まった。「まず、超電導という馴染みのない言葉に衝撃を受けた」と緒方は言う。「超電導技術を用いた加熱装置が使われるシチュエーションさえ想像がつかなかったが、入社20年目で恵まれた新しい技術に触れられるチャンス。不安もありつつ、楽しみも大きかった」。開発プロジェクトには、超電導分野において先駆的な研究を進めている中部電力株式会社や新潟大学、産業技術総合研究所、また高温アルミ物性調査にご協力いただける広島県西部工業技術センター、エンドユーザーである安田金属工業が参加することとなった。

立ちはだかる、
多大な開発費用。

プロジェクトを進めるうえでまずネックとなったのが、多大な開発費用である。今回の超電導を活用した装置の開発には、試作だけでも1台1億円以上が必要と考えられた。資金調達のために「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」採択をめざしたが、開発1年目はあえなく落選。「今思うと、申請書の内容やプレゼンなど全く詰め切れていなかった」と伊東は言う。その後1年間、開発や研究を進める中で超電導や、加熱装置に対する理解も深まり、翌年には競争的資金を獲得することができた。

世の中にないものを生み出す苦しみが、
着実に成果へ繋がる。

超電導はテラル初であるとともに、産業用にまだ応用されていない分野である。「超電導の部分はプロジェクトメンバーである中部電力や新潟大学が長年研究をしているため、あまり手を加える必要はないが、アルミビレットを支え、回転させる機構(構造体)はテラルで一から設計する必要があった」と正は言う。参考となる製品がないなか、製品仕様の決定や必要な要素技術の洗い出しなど試行錯誤の日々は続いた。「アルミビレットを加熱する温度は500度。高温に加熱するアルミをどのように取り扱えばよいのか、まずは高温アルミの物性データの取得から検討が必要だった。次にその物性値を考慮した機構(構造体)・制御をどのように構築するか。課題を一つひとつクリアすることで着実に前へ進んだ」と緒方は言う。解析技術の導入により、試作前にある程度シミュレーションすることが可能となったが、それでも実験すること以上の評価を得ることは難しい。開発コストも考慮し、一度の実験で最大限の検証ができるように社内の製造、生産技術担当者とも議論を重ねて、部分的な試作品づくりが行われた。
当時を振り返り、伊東は「使用する部品、装置のサイズや重量などはこれまで扱ってきたものとは大きく異なるが、設計・試作・評価などのプロセスは、これまでの経験や知識が十分に生かせると思っていた」と語る。また、製品仕様の決定には何度もエンドユーザーである安田金属工業に出向き、現地確認やヒアリングが行われた。「どんな製品でも、ユーザーの要求事項を十分把握しておくことが重要。そのためには、文書化された仕様書やヒアリングだけではなく、現物を自分の目で確認し、感じることがとても大切」。
「図面を描いては修正を繰り返した」と正は言うが、生みの苦しみこそがさらに良い製品づくりに確実に繋がっている。

  • ※アルミビレット:アルミ加工品を作るための素材

技術開発のフェーズを終え、
製品化へ大きな一歩を。

「テラルは業界に先駆けてユニット製品を作った会社。さまざまな装置を組み合わせて機能させることに関しては高い技術と知識をもっている」。新たな分野への挑戦においてもテラルの強みが生かされていると緒方は言う。2021年1月には、今回の製品の要とも言えるコイルを2つ組み合わせた強力磁場装置の検証実験が行われる。シミュレーションによりある程度結果は予測しているが、大幅な違いがでれば設計の見直しが余儀なくされる、まさに山場である。7月末には完成試作1号機の製作が予定されており、技術開発から製品化という次のステップに向かう。「どのような異常が発生するか、異常が起こった場合どのようにして安全性を確保するか、まだまだ課題は山積み。今は目の前のことを着実にこなし、完成試作1号機に向けて取り組みたい」と正は言う。

新たに培われた知識、技術が
国境を越えて活躍する日を夢見て。

プロジェクトリーダーの伊東が「このプロジェクトのゴールは、超電導技術を活用した金属加熱をテラルの事業分野の一つと言えるまで押し上げること」と語るように、メンバー全員が製品完成の先を見つめている。「日本国内の需要は限定的だが、海外を視野に入れると市場規模は格段に広がると考えられる。我々が中国で生産しているモーターにも、アルミ押出加工を用いた部品を多く使用している。また現在はものづくりの現場も日本からアジア等に広がりを見せているため、日本で実績を作り、この技術が世界で活用されるようになれば嬉しい」と緒方は語る。
開発が進むにつれて社内の期待も高まりをみせている。期待を追い風に、テラルの今後を担う一大プロジェクトの完遂に向けて挑戦は続く。